脳波ブログ
脳波計研究者が脳波測定の最新情報や脳波に関する知見をお伝えしていきます

脳波でなにがわかるの?

脳波でわかることは、大雑把に言うと
「頭を使っているか、使っていないか」です。

脳波はアルファ波、ベータ波、シータ波などの
成分に分ける事ができます。

頭を使っている状態ではベータ波が現れ、
使っていない状態にはアルファ波が現れます。
また脳の弛緩(傾眠)状態では
シータ波という波形が増えてきます。

「頭を使っている状態」とは、
何らかのストレスがかかっている状態であり
(緊張、興奮、思考など)、
「頭を使っていない状態」とは、
覚醒度の低下している状態かあるいは、
リラックスしている状態と言えます。

覚醒度を一定に保った状態で脳波を計測すれば、
リラックス状態とストレス状態は
上グラフのように誰でも簡単に判別できます。

脳波は病院などで、てんかんの診断や
脳死判定などにも使われますがこれらは
波形を判読するための専門知識が必要です。

また、アルファ波が多く出れば良い状態とは限りません。
例えば、車の運転中にアルファ波が出ているとすると、それはリラックスしているか眠たくなっているかのどちらかですので、眠たくなっているとすれば大変危険な状態です。 また、「アルファ波が脳をリラックスさせる」のではなく、「リラックスしているからアルファ波が出る」が正解です。
アルファ波もベータ波も、脳の反応であり、薬のようなものではありません。
また、脳波から「何を考えているか」や「喜怒哀楽」はわかりません。

その他、事象関連電位P300という特殊な脳波を測定する事によって「注意力や認知能力」が分かります。
この脳波を測るにはオドボール課題というタスクを行います。オドボール課題とは、例えば低音と高音を8:2くらいの割合でランダムに鳴らし、被験者に高音が鳴った時だけボタンを押してもらい、高音が30から50回鳴るまで続けるというタスクです。この30から50のデータを加算平均するとノイズが消えて谷のある波形が現れます。この谷の名称をP300と言い、音が鳴った瞬間から谷のボトムまでの時間を「潜時」と言って注意力や覚醒度等の指標になります(短いほど覚醒度が高い)。また、この谷の深さを「振幅」と言って認知能力等の指標になります(深いほど認知力あり)。また、このP300を利用してストレス度の実験も行えます。

また、上記のオドボール課題の刺激を2つにする事によってCNV(随伴陰性変動)という脳波がは測れます。これにより第1刺激を受けてから第2刺激を認識するまでの集中力が分かります。

また、ブレイン・マシン・インタフェイスという脳波で機械を動かす研究が行われていますが、
これは頭蓋内脳波の使用(直接脳に電極を貼るため頭蓋骨を開けなければなりません)が主流です。
手が不自由な方の脳波によりロボットアームを動かし、物を掴んで持ち上げる事ができます。

なお余談ですが、弊社のミューズブレインシステムは他社のmuseという製品とは全く関係ありません。

この記事の著者

木村 晶朗
株式会社デジタルメディック 代表取締役社長
木村 晶朗
関西学院大学法学部卒業後、ヤマハ発動機、ロームにてプログラム開発等を担当。独立後、ストレス軽減を目的とした「脳波フィードバックシステム」の特許を取得。本特許を事業化すべく経産省、京都府補助事業に採択され京都教育大学 中村道彦教授と6年間の共同研究を行う。その間の実験における被験者数は1,000人以上。システムは完成したがソフトウェアよりもハードウェアが評判を呼んだため脳波計の販売を開始、大手企業や有名大学に500台ほど売れる。ユーザーの実験のサポートも行っているため、経験した実験の種類は100を超える。